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『世界観』って言葉を使う人の思考停止について


先日、19の女の子と一緒にご飯を食べる機会があった。
出会いはTinderというアプリだった。
当時僕はTinderの有料会員になったばかりだったのだが、そこで見つけたのが彼女だったのである。


たまたまその子とマッチングしたのと同時に、恋愛メディア『らぶりりーす』であんちゃさんが書かれていた「【恋活】マッチングアプリで真の可愛い女子を見つけたければこの1つだけ気をつけろ」を読んでいたのだが、記事内に挙げられている「SNOWを使っているかどうか見分ける方法」に、その子が全部該当しており、当然のことながら湧き上がってきた「この子もSNOW詐欺なのか…?」という謎を解き明かすため、実際にその子に会ってみることにしたのだ。したがってこれは純粋な探究心の発露であり、浮かれた気持ちや下心など全くなかったことは自明である。

ひとつお断りをしておくと、らぶりりーすの記事に書かれていたことが正しいのか正しくないのかをジャッジするのは、ここでの主旨ではない。

結果的にはまあ確かにSNOW詐欺だったのだが、その子に写真のブログ掲載許可を貰えなかった以上、ここで詐欺写メの検証をすることはできないというのが真相である。ま、当然だ。

SNOW詐欺の話はさておき、僕さそのTinderの子と実際に会い、食事をしながら色んな話をした。その時にちょっと「あっ、なるほどな」と思った話があった。

その子は絵描きで、話によるともうすぐ初個展を開催するとのことだった。個展のポストカードを見せてもらうと、そこには彼女の書いた絵が。テイスト的にはゴスロリ系イラストとでもいうのだろうか。

その絵を見ながら色々と話していると、ふと彼女がこういうことを口にした。

「私、『世界観』っていう言葉が大嫌いなんですよねー。『独特の世界観ですね』とかよく言われますけど、『世界観』って言葉って何も言ってないに等しくないですか?」

これにはハッとさせられた。

よくよく考えてみるとその通りだ。『世界観』という言葉からは何の具体的な印象も伝わらない。いや、言ってる人の気持ちは何となく解らないでもない。僕も例えばティム・バートンの映画を観た後なんかに「いや〜、凄い世界観だね〜」なんて言ったことが幾度となくあったと思うから。

ただ、この『世界観』という言葉自体がいつでも悪いという話ではない。あくまで「何か作品を観た後に、その作者に直接感想を伝える時には『世界観』という言葉はあまりにも安直で、イメージを言語化できていない」ということである。確かにティム・バートンに直接「あなたの作品は世界観が凄いですね!」なんて言ったら、「どんな風に?」と聞き返されるに違いない。

それでは、何か作品などを観た時に「世界観が凄いなあ」と感じた時に、それをもっと具体的な表現にするにはどうしたら良いのか?

『世界観』とは、簡単に言うと「作者の世界の見方」のことである。つまり「世界観が凄い」と言うのは「作者の世界の見方が凄い」ということである。

映画や絵のようなアート作品の場合、「作者の世界の見方」が「表現方法」に直結することが多い。ものすごく単純な例では、作者が世の中に対して「希望がない」と感じていると、作品の中の世界は色褪せて描かれたりするといった具合だ。

つまり作品の中の「世界」の描かれ方を見れば、作品の「世界の見方」が分かるということであり、世界の描かれ方を言葉で言い表すことができれば、「世界観の凄さ」を具体的に語ることができると言っても良いだろう。

例えばティム・バートンの初期の大名作アニメ『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の場合はどうだろう。

こちらが『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の冒頭シーンだ。オープニングテーマから目まぐるしくカメラとキャラが動き回り、この映画の世界に引き込まれていくと思う。
ではこの「世界」がどうやって描かれているかを分析してみよう。

まず最初に感じるのは不気味な感覚だ。これは主に夜の墓場やお化けの町というシーン、画面の暗さ、BGMによって演出されている。

しかしよくよく見てみると、登場するキャラクターは全員お化けなのにも関わらず、皆どこか愛嬌があって可愛らしいことに気付く。

これは恐らく作者の「世界の見方」がそのまま映像に反映されたものだと思われる。つまり「一見すると望みなど何もないように見える中に、じっくり観察するととても素晴らしいものがある」といった感じだ。言い換えると「歪みの中に見える本質」である。

これは作者の「世界の見方」そのものであるので、例え作品が変わってもその見方自体は受け継がれていることが多い。例えば発表年は遡るが、同じティム・バートン原案の『シザー・ハンズ』なども、歪んだ外見の中に宿る純粋な心を描いた作品であった。

映画の場合、ストーリーやメッセージ性などは全体を通してみないと分からない。しかし「世界観」については、たったワンシーンを見るだけでも伝わってくる場合があり、それがその作品のメッセージそのものだという場合もある。

絵もまた同じであり、例えばその絵のメッセージ性が分からなくても、色使い、筆のタッチ、モチーフの選び方などである程度その作者の「世界の見方」が分かることも多い。

例えば今回僕が見たようなゴスロリ系の絵の場合だったら「モノトーンでラフなタッチの絵柄だけど、ところどころ鮮やかな差し色が使われていて目を引きますね」とか、「熊の人形を持ったメイド服の女の子が、冷たい目でこっちを見ているのが印象的です」とかそういった事実を言うだけでも、「世界観がありますね」という、何かを言っているようで実は何も言っていない感想よりは幾分マシである。

なぜなら絵というものは、往々にしてタッチや色やモチーフそのものがメッセージだったりするからである。ま、単に事実を述べているだけなのは変わらないのだけれども。

そこからもう少し突っ込んで事実を分析していくと、もうちょっと深い感想になっていくのだが、今回はそれは主旨ではないので割愛したい。

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